皆様、こんにちは。塗り絵研究家の白河みなみです。
前回は、華やかな自然美が広がる「嵐山・渡月橋」をご紹介しました。
第7回となる今回、私たちが訪れるのは、究極の「引き算の美」が存在する場所、世界遺産**「龍安寺(りょうあんじ)」**です。
枯山水の石庭としてあまりにも有名なこの寺院は、イギリスのエリザベス女王が訪れた際に絶賛したことで、世界的な「ZEN(禅)」ブームの火付け役ともなりました。塗り絵本において、龍安寺のページは一見すると「塗る場所が少ない?」と思われるかもしれません。白い砂と、点在する石。しかし、この「余白」こそが最大の塗りごたえなのです。
砂の陰影をどう表現するか、土塀の油しみをどう色付けるか。今回は、正解のない問いに向き合うような、龍安寺の不思議な魅力と楽しみ方をご紹介します。
四季を映す「鏡容池」と回遊式庭園
石庭のストイックな美しさとは対照的に、龍安寺の境内には豊かな自然が広がっています。山門をくぐってすぐの場所にある**「鏡容池(きょうようち)」**は、平安時代の貴族が舟遊びを楽しんだとも伝わる大きな池です。
この池は、四季折々に美しい表情を見せてくれます。春には桜が水面を彩り、初夏には水連(スイレン)が水面を覆い尽くします。秋になれば、周囲のカエデが赤や黄色に染まり、水面に映る紅葉の美しさは息をのむほどです。かつてはオシドリの名所であったことから「オシドリ池」とも呼ばれていたそうです。
塗り絵本では、無機質な石庭と、生命力あふれる鏡容池の植物たちとの対比も楽しんでいただけます。特に水連の葉の緑や、水面のきらめきを鮮やかに塗ることで、石庭の静けさがより一層際立つことでしょう。
徳川光圀ゆかりの「つくばい」と日本最古の椿
茶室「蔵六庵」の近くにある**「蹲踞(つくばい)」**も、龍安寺を語る上で欠かせない存在です。これは水戸黄門として知られる徳川光圀が寄進したと伝えられています。
このつくばいには、中央の水穴を「口」という漢字に見立て、「吾唯足知(ワレ タダ タルヲ シリ)」と読む文字が刻まれています。「満足することを知っている人は、貧しくても幸せである」という禅の格言を図案化したもので、石庭の謎めいた雰囲気とも通じる知的な遊び心を感じさせます。苔むした石の質感や、水に濡れた表面の艶を、色鉛筆のタッチを変えて表現してみてください。
また、境内には豊臣秀吉が絶賛したと伝わる「日本最古の侘助椿(わびすけつばき)」もあります。冬から春にかけて訪れる際は、この椿の可憐な姿も必見です。
アクセスと拝観のポイント
龍安寺へのアクセス情報をご紹介します。公共交通機関を利用する場合、京福電鉄(嵐電)北野線「龍安寺駅」から徒歩約7分です。また、JR京都駅からは市バスを利用し「立命館大学前」で下車して徒歩約7分、または「竜安寺前」バス停すぐの場所にあります。
石庭は季節や時間帯によって影の落ち方が変わり、全く違う表情を見せます。 特に早朝や夕方の斜光が差し込む時間帯は、砂紋の陰影が深く刻まれ、よりドラマチックな雰囲気になります。混雑を避けて静かに「禅」の世界に浸りたい方は、朝一番の拝観がおすすめです。
編集後記:あなたの心は何を映しますか?
15個の石は、どの角度から見ても必ず1つは隠れて見えないように配置されているとも言われています(諸説あり)。 「足りないもの」を探すのではなく、「今あるもの」と向き合う時間。龍安寺の塗り絵は、そんなマインドフルネスなひとときを提供してくれます。
あなたが塗る石庭は、曇りのない明るい白でしょうか、それとも夕暮れの愁いを帯びた色でしょうか。ぜひ、今のあなたの心の色を映し出してみてください。
次回は、龍安寺からきぬかけの路をさらに東へ。「御室桜(おむろざくら)」で有名な世界遺産「仁和寺」をご紹介します。遅咲きの桜が織りなす春の絶景をお楽しみに。
関連記事
・嵐山・渡月橋 ~月が渡る橋と四季の山々が織りなす山紫水明の世界~
参考資料
・京都のおすすめ観光スポット71!世界遺産の社寺から穴場まで網羅