皆様、こんにちは。塗り絵研究家の白河みなみです。
前回は、謎多き石庭で知られる「龍安寺」をご紹介しました。きぬかけの路をさらに西へと進み、最後にたどり着くのが、今回のテーマである世界遺産**「仁和寺(にんなじ)」**です。
ここは単なるお寺ではありません。かつては皇族が住職を務めた「門跡寺院(もんぜきじいん)」として、最高の格式を誇ってきた場所です。そのため、境内の建物や雰囲気には、どこか宮廷のような優美さが漂っています。
塗り絵本においては、辺りを埋め尽くすような桜の風景と、どっしりとした五重塔の対比が美しいページをご用意しました。春の爛漫な色彩と、歴史ある建築物の重厚感。この二つをどう調和させるかが、今回の塗り絵のポイントとなります。それでは、仁和寺が紡いできた「雅」な歴史と見どころを紐解いていきましょう。
皇室ゆかりの「御室御所」としての格式
仁和寺の歴史は平安時代前期、仁和4年(888年)に宇多天皇によって創建されたことに始まります。宇多天皇は譲位後、ここに出家して「御室(おむろ)」と呼ばれる僧坊を営みました。それ以来、明治維新に至るまで皇族が代々住職を務めてきたことから、「御室御所(おむろごしょ)」とも呼ばれ親しまれてきました。
塗り絵を塗る際、この「高貴さ」を意識してみてください。例えば、建物の木部を塗る際も、荒々しい古木というよりは、手入れの行き届いた檜皮(ひわだ)の色や、上品な白壁のコントラストを大切にすることで、門跡寺院ならではの品格が表現できるはずです。
迫力の「二王門」と京のランドマーク「五重塔」
仁和寺に到着してまず圧倒されるのが、道路に面して堂々とそびえ立つ巨大な**「二王門(におうもん)」**です。 高さ約18.7メートルにも及ぶこの門は、「知恩院」の三門、「南禅寺」の三門とともに「京都三大門」の一つに数えられています。
塗り絵本では、この門の左右に安置された金剛力士像の力強さや、重層な屋根を再現しています。門の色は落ち着いた木の色味が特徴ですが、光の当たり具合によって焦げ茶や深い茜色を使い分けることで、立体的で迫力ある仕上がりになります。
そして、境内を進むと見えてくるのが重要文化財の**「五重塔」**です。東寺の塔と同様に江戸時代に建てられたものですが、各層の屋根の大きさがほぼ同じであるという特徴を持っています。これにより、どっしりとした安定感のあるシルエットが生み出されています。塔の凛とした姿がより一層引き立つよう、背景の青空を広く取りました。
目線の高さで咲き誇る「御室桜」の絶景
仁和寺を語る上で欠かせないのが、春の絶景**「御室桜(おむろざくら)」**です。 京都の桜の中でも遅咲きとして知られ、市内のソメイヨシノが散り始める頃に見頃を迎えます。
この桜の最大の特徴は、樹高が非常に低いことです。背丈が低く、根元から枝分かれして花をつけるため、まるで桜の雲海の中を歩いているような感覚に陥ります。花(鼻)が低いことから「お多福桜」とも呼ばれ、親しまれてきました。
塗り絵においては、この桜のページが一番のハイライトと言えるでしょう。 五重塔を背景に、手前を埋め尽くす薄紅色の花々。桜の色を一色で塗りつぶすのではなく、蕾の濃いピンク、満開の薄いピンク、そして影になる部分の少し青みがかったピンクなど、数種類の色鉛筆を使い分けるのがコツです。「春の京都のフィナーレ」を飾る華やかな一枚を完成させてください。
国宝「金堂」と御殿の美
境内の奥にある国宝の**「金堂(こんどう)」**は、実は現存する最古の紫宸殿(ししんでん)の遺構です。
かつて御所にあった建物を移築したものであり、寺院建築でありながら宮殿建築の様式を色濃く残しています。屋根の上に載っている亀の背に乗った仙人などの留蓋瓦(とめぶたがわら)など、細部の装飾にも注目して塗ってみると面白い発見があるかもしれません。
また、拝観受付を入ってすぐの「御殿」エリアも見逃せません。白砂の庭園や、渡り廊下で結ばれた建物群は、まさに王朝文学の世界。襖絵や庭の砂紋(さもん)など、繊細な美しさを楽しむことができます。
編集後記:きぬかけの路を彩るフィナーレ
金閣寺、龍安寺、そして仁和寺へと続く「きぬかけの路」は、それぞれ「金」「石」「桜(と御殿)」という異なる魅力を持った世界遺産のリレーでした。 今回の仁和寺の塗り絵を通して、平安貴族が愛した優雅な春のひとときを、ご自宅で感じていただければ幸いです。
次回は、少しエリアを変えて、京都の繁華街・四条河原町からも近い「南座」と「錦市場」をご紹介します。活気あふれる京の町衆文化を、カラフルな色使いで表現してみましょう。
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